不調改善

麻酔科医が指摘する血流を整える入浴法「肩までしっかり浸かる」は間違いだった!?

お風呂に入っている女性
血流をよくするお風呂の入り方を医師が指南(Ph/photoAC)
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誰でも簡単にできる「1分間血流アップ体操」を考案し、『血流がすべて』(アスコム)を上梓した麻酔科医の富永喜代さん。富永さんは血流をよくして体が温まると、免疫力が高まり、病気を遠ざけることができると話しますが、さらに、お風呂の入り方にも血流をよくするコツがあるそうです。そこで、富永さんが推奨するお風呂の入り方について聞きました。

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血流を整えるための入浴のコツ

血流を整える入浴のコツとして、お風呂に入るときのお湯の量や温度について、富永さんは気をつけるべきことがあると話します。

お風呂に肩まで浸かるのは間違い!

肩までしっかりお風呂につかるように、子供の頃に言われていたり、子供に言ったりしている人もいるのではないでしょうか? でもこれは、血流改善の観点から考えると悪い入浴方法の代表例といえるそうです。

「肩までつかると、血管が、水圧によってギューッと押さえつけられてしまうからなんです」(富永さん・以下同)

心臓よりも高い位置まで湯につかると、静脈の圧よりも水圧が高くなり、手足や内臓の静脈がぎゅっと圧迫されてしまいます。すると、血液は心臓に向かって一気に移動し、増えた血液をくみ出すために、無理して働くようになるそうです。

「肩までつかっている本人は『いい湯だな』と思っていても、体は心臓に負担がかかるという『緊急事態』への対応に大わらわとなっているわけです」

心臓に負荷がかかったまま長風呂をしてしまうと、浴室で亡くなる原因にもなる立ちくらみが起こるリスクも高くなります。

湯船に足を入れようとしている
実は肩まで湯に浸かるのはNG(Ph/photoAC)
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「おすすめは、みぞおちまでつかる半身浴。これを守るためにも『湯量は腰まで』をルールにしましょう」

どうしても肩までつかりたいときは、38〜40℃のぬるめのお湯で3分以内にすることで、心臓や肺にかかる負担を減らすことができます。

お湯の温度は「数値」で確認!

入浴に関する全国調査によると、日本人のお風呂の平均湯温は41℃なのだそうです。富永さんは「日本人は熱いお風呂が大好き」だといいますが、42℃以上の入浴は皮膚への刺激によって血圧を上昇させてしまうため、危険なのだといいます。

「熱いお湯は交感神経を刺激し、筋肉を引き締める作用があるので、筋肉の間を走る血管が収縮。リラックスできずに興奮状態になるだけでなく、血流が落ち、心臓への負担が増えてしまうんです」

さらに、最初にお湯に触れる足先の温点・冷点は、20代に比べ、70代では3分の1ほどになるそうです。つまり、歳を重ねるほどにお湯への感覚が鈍ってしまうので、お年寄りは熱いお湯にも肩まで浸かることができるのだといいます。

「しかも、冬場などは手先、足先が冷えているので長風呂でじっくり温まろうとする。これは疲労、脱水、血管虚脱(血管がひろがりすぎて、血流が落ち、脳へ必要な酸素や栄養素が届かなくなる)といった症状を引き起こす可能性があり、かなり危険な状態。湯温は自分の肌感覚だけではなく、『数値』で見て把握しておくべきです」

給湯器のリモコンのボタンを押す
湯温は感覚ではなく設定で調整する(Ph/photoAC)
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また、高温のお湯につかると交感神経の働きが活発になってしまうため、リラックス効果を得られなくなってしまう。リラックスしたいのであれば、副交感神経の働きを高める必要があります。

「副交感神経の働きが高まれば、精神的に落ち着き、末梢血管も拡張し、血圧は下がっていき、血流が向上。心臓の負担も軽くなります」

それを踏まえて、富永さんがおすすめするのは「夏なら38℃、冬なら40℃」。体が疲れているときは、みぞおちあたりまでのぬるめのお湯に10分ほどゆっくりつかりましょう。

「これで副交感神経が働き、末梢血管が拡張。入浴から5分経過すると、白血球、リンパ球、NK細胞など、免疫力を支える免疫細胞が増えることがわかっています。もちろん、血流も整い、体のすみずみまで栄養と酸素が行き届き、疲労物質も回収・排出されるので、疲れが軽くなります」

手を触っている
血流が改善することで体のすみずみまで栄養と酸素が行き届き、疲れがとれる(Ph/photoAC)
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