不調改善

《26分の仮眠で仕事効率が34%アップ!》精神科医が教える「睡眠」の新常識 仮眠を仕事に活かす「パワーナップ実践法」のススメ

記憶の定着にとって大敵となる睡眠不足(写真/GettyImages)
写真5枚

最も記憶に適した時間帯は夜。ですが、記憶の定着に大敵となるのが睡眠不足です。 脳の仕組みを研究した精神科医の樺沢紫苑さんが、「記憶」と「学び」について20年以上の試行錯誤をわかりやすくノウハウとしてまとめた『記憶脳』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けします。

* * *

「寝だめ」しても睡眠不足は補えない

睡眠時間を削ると、記憶力に限らず、翌日の注意・集中力、認知能力、学習能力など、ほとんどの脳機能が低下することがわかっています。

「普段は睡眠を削っても、土、日にたっぷり眠れば、その分は取り返せるだろう」と思っている人も多いでしょうが、アメリカのブゴンツァス博士の研究によって、これが間違いであることが示されました。

13日の間に、8時間睡眠を4日、6時間睡眠を6日、10時間睡眠を3日、順にとってもらい、検査を実施しました。

2時間の睡眠削減によって、眠気や認知機能の低下が観察されました。その後、10時間の睡眠を3日とる(週末の「寝だめ」を再現)と、眠気は改善しましたが、認知機能は回復しなかったのです。

つまり、「睡眠不足でも、その後たっぷり眠れば脳は回復する」というのは間違いだったわけです。平日、睡眠を削った分、週末に10時間の睡眠をとったとしても、低下した認知能力は回復しない。つまり、休日明けも脳のパフォーマンスが低下した状態が続くのです。

慢性的な睡眠不足の人は、常に頭がボーッとして、100%のパフォーマンスを発揮できない状態で勉強や仕事をしている、ということになります。

毎日6時間以上の睡眠をとって、集中力を高めて、脳のパフォーマンスをベストに維持する。これが集中力や記憶力、さらにはビジネスの作業効率を保つためには必須なのです。

ちょっと寝るだけでも記憶は定着する!

記憶のためには、6時間以上の睡眠が必要。そうはいっても、仕事が忙しくて、毎日残業もあり、十分な睡眠時間をとることは無理だという人もいるでしょう。そういう人は、どうすればいいのでしょう?

眠そうな女性
「仮眠」が脳のパフォーマンス低下を乗り越える切り札に(Ph/photoAC)
写真5枚

睡眠不足によるパフォーマンス低下を乗り越える切り札は、「仮眠」です。

ドイツのリューベック大学の研究に、以下のようなものがあります。まず、被験者にイラストが描かれた15種類のカードを記憶してもらいます。40分後、被験者の半分には、最初のカードと少しイラストが違うカードを覚えさせます(記憶のかくらんのため)。残りの被験者には40分間の軽い睡眠(ノンレム睡眠)をとった後にカードを記憶させました。その後、最初に覚えたカードについてテストをしました。

すると、睡眠をとったグループのほうが、睡眠をとらなかったグループよりも良い結果を出しました。睡眠をとらなかったグループの正解率は60%でしたが、睡眠をとったグループの正解率は85%になったのです。

また、脳の画像分析の結果、睡眠によって記憶の長期保存が促されたことが確認されました。

睡眠によって記憶の長期保存が促進され、種々の情報による記憶の衝突を防ぐことができる。たった40分の仮眠でも、記憶の定着に大きな影響を及ぼすのです。

26分の仮眠で仕事効率が34%もアップする

仮眠は、記憶以外にも、脳のパフォーマンスを全般的に改善します。アメリカのNASAの研究によると、26分の仮眠によって、仕事効率が34%アップ、注意力は54%もアップしたそうです。

アメリカでは、仮眠室やナップポッドと呼ばれる睡眠マシンを導入する企業が増えており、Googleやナイキなどの大手企業も導入しています。

また日本でも、厚生労働省が作成する「健康づくりのための睡眠指針」が2014年に11年ぶりに改定されました。

そこには、以下のように書かれています。

「午後の眠気による仕事の問題を改善するのに昼寝が役に立ちます。午後の早い時刻に 30分以内の短い昼寝をすることが、眠気による作業能率の改善に効果的です」

仮眠の効果について、国がお墨つきを与えているのです。

一昔前であれば、昼寝していると「何やってるんだ!」と叱られそうな雰囲気があったかもしれませんが、最近では日本の企業でも、仮眠室を設け、仮眠をサポートする会社が増えているようです。