不調改善

《50代から気をつけたい》75歳の現役医師が教える健康に長生きするための“きん・こつ・けつ”とは?

メガネをかけた男性
鎌田實さんがたどりついた、健康のポイントとは?
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『医師のぼくが50年かけてたどりついた鎌田式長生き食事術』(アスコム)を上梓した75歳の医師・鎌田實さんは、佐賀県で『がんばらない健康長寿実践塾』、通称『鎌田塾』を開き、健康的な食や運動習慣を伝えています。2020年には佐賀県の女性の健康寿命が85.2歳となり、長野県、大分県と並ぶ全国1位になりました(国民健康保険中央会発表)。健康づくり運動を50年行ってきた鎌田さんがたどりついた、健康のポイント“きん・こつ・けつ”について、同書をもとに詳しく教えてもらいました。

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フレイルにならない!たん活のすすめ

年をとっても介護に頼らず、自分で生活を営むための秘訣は“きん・こつ・けつ”なのだと鎌田さんは話します。きん=筋肉、こつ=骨、けつ=血管を若く維持し続けるコツから、まずは“きん”について解説します。

女性は特に気をつけたい、筋肉が減る“フレイル”

鎌田さんによると、人間は40歳を過ぎると、毎年1%ずつ筋肉が減っていくそうです。

「筋肉が減ると、筋肉の衰えにより心身の働きが弱くなるフレイルという虚弱症状が起こります。65歳以上の8.7%がフレイルで、40.8%がプレフレイルというフレイル予備軍というデータもあるほど、身近な症状なんです。

本をもって笑顔を見せる男性
『医師のぼくが50年かけてたどりついた鎌田式長生き食事術』を上梓した
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特に女性はフレイルの症状がある人の割合が高く、70歳を超えると筋肉と骨がものすごく弱ってきます。50代から気をつけておけば、その後の人生をより健康的に体を動かしやすくなりますよ。筋肉をつけておけば、代謝がよくなり、太りにくい体にもつながります」(鎌田さん・以下同)

自身がフレイルに当てはまるかは、下記のチェックポイントで確認できます。1つでも当てはまればプチフレイル、3つ以上当てはまったらフレイルの可能性が高い状態です。

□立つときに「よいしょ」と言う
□ペットボトルのふたが開けにくい
□以前に比べて疲れやすい
□前を歩く人を追い抜けない
□1年で体重が2~3kg減った

フレイルは放っておくと、要介護へとまっしぐらのリスクがあるといいます。そこで、鎌田さんは、筋肉の材料であるたんぱく質を積極的に取る“たん活”をすすめています。

フレイルにならない“たん活”食事法とは?

鎌田さんによれば、“たん活”は肉、魚、野菜(豆類)などおなじみの食材でOK。特に朝に摂るたんぱく質は、効率よく筋肉に変わってくれるそうです。

また、食間に“たん活”おやつを取り入れるのもおすすめです。午前10時や午後3時など、3食の間にこまめに摂るのが理想的。

3時を指す置き時計
不足しがちなたんぱく質はおやつで補うのが◎(Ph/photoAC)
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「たとえば、果物やせんべいなど糖質が高く血糖値が上がりやすいおやつを、たんぱく質たっぷりなものに置き換えてみましょう。ヨーグルトやチーズなどの乳製品やゆで卵など、冷蔵庫に常備できるものがおすすめです。

また、ナッツ類はたんぱく質が豊富な上に、体によい脂質やビタミン、ミネラル、鉄分、食物繊維がたっぷりで、バランスのよいおやつになります」

骨粗しょう症は食べ物で防ぐ!骨を強くする食事

骨密度の正常値は80%で、腰や大腿骨のいずれかの骨密度が70%を下回ると骨粗しょう症と診断されます。骨粗しょう症の人は全国で約1280万人おり、60代女性では5人に1人、70代女性では3人に1人といわれ、更年期以降の女性の割合が特に高いのだそうです。

骨密度が低下すると、くしゃみで骨折する人もいるほど、骨の強度は老後の健康に関わってきます。また、眼窩(がんか)という目の周りの骨がくぼむと、目尻にシワが寄り、クマができて老けて見える傾向にあります。

目の下を押さえる女性
骨密度の低下は見た目に影響することも(Ph/PhotoAC)
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骨を作るにはカルシウム!摂取時に気をつけること

75歳の鎌田さんの骨密度は、なんと135%もあるそうです。では、骨密度の低下を防ぐには、どんなことに気をつけるべきなのでしょうか?

「骨を強くするためには、バランスのよい食事とこまめなカルシウム摂取が大切です。カルシウムというと魚介類や乳製品のイメージですが、大豆食品や野菜にも含まれています。

また、カルシウムは尿や便として少しずつ排出されやすい栄養なので、こまめに摂ることも欠かせません。しらす干しなどの小魚は効率よく、手軽にカルシウムを摂取できます」

カルシウムが豊富な食材は、乳製品、大豆・大豆食品、野菜類、魚介・海藻類の4つ。この4つの食品群の中から、最低2群を摂る“4群・2群の法則”を鎌田さんは推奨しています。

胸の前で手を広げる男性
鎌田さんが推奨する“4群・2群の法則”
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カルシウムだけじゃない!骨を強くする栄養

さらに、いくつになってもスタスタと歩ける強い骨を作るには、カルシウムだけでなくビタミンDやKを一緒に摂取することも欠かせないそうです。

「ビタミンDには腸管でのカルシウムの吸収率をアップさせる働きがあり、ビタミンKはカルシウムが骨に沈着するのを助け、骨を壊す破骨細胞の働きをおさえてくれます。

ビタミンDが多いのは魚やきのこなどで、一方のビタミンKは発酵食品に多く含まれていて、納豆には特にたっぷり入っています。海苔やわかめ、ひじきなどの海藻類にも含まれます」

和定食
魚やきのこ、納豆や海藻にも多く含まれているビタミンD(Ph/photoAC)
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また、骨を弱らせるリンには要注意。体に必要なミネラルではあるものの、過剰に摂るとカルシウムと結合して、体外に排出されてしまいます。スナック菓子やインスタント食品、清涼飲料水などに多く含まれているので、できるだけ控えるようにしましょう。