不調改善

《50代から気をつけたい》75歳の現役医師が教える健康に長生きするための“きん・こつ・けつ”とは?

長生きの敵、血管の老化を予防するには減塩

血管が老いると、体の不調や恐ろしい合併症を引き起こす動脈硬化、胸や手足に異常を感じる血管障害などを招きます。鎌田さんは、若々しい血管こそが長生きの秘訣だと話します。

血管老化度をチェック

「血管の老化度を測ってみましょう。(最高血圧−最低血圧)÷3+最低血圧の値が、100を超えたら血管の老いの兆候があり、動脈硬化が始まっている可能性があります。ただし、最高血圧と最低血圧が150〜90の間であれば、薬に頼らず、食習慣の改善によって血管を健康へと導くことが出来ます」

鎌田さんによれば、食事でまず工夫すべきは減塩。塩分の摂りすぎは血圧を高めて、血管の老化に拍車をかけます。また、野菜や海藻をたくさん摂ることもポイントです。ほうれん草や小松菜、海藻類には塩分を排出するカリウムが豊富に含まれているので、積極的に摂りましょう。さらに、抗酸化作用や抗炎症作用が期待できる、しょうがやスパイス類を活用するのも手です。

血圧計と塩
血管の老化を防ぐには減塩が効果的(Ph/photoAC)
写真10枚

ちなみに、女性に多い低血圧は、気にしなくてもよいのだと話します。

「低血圧は病気ではありません。むしろ、80歳を超えても動脈硬化になりにくい体質と言えるので、実はラッキーなんです。とはいえ、低血圧でも血管が老化することはあり得ますので、食事の意識はしたほうがいいでしょう」

牛乳が減塩料理の味方に!

日本人はみそや醤油、塩を調味料としてよく使うため、塩分摂取量が多くなりがちです。そこで鎌田さんは、いつもの料理に牛乳を使うことをおすすめしています。

「牛乳を加えることで、醤油やだし、みそなどの塩分を減らしてもコクや旨味が引き出されておいしくなります。そのうえ、牛乳はたんぱく質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンがバランスよく摂れる準完全栄養食です」

ひじきの和え物
牛乳で戻したひじきの和え物(Ph/『医師のぼくが50年かけてたどりついた鎌田式長生き食事術』(アスコム)より)
写真10枚

たとえば、味噌汁のだしの半量を牛乳に、煮物の水を牛乳に置き換え、野菜を牛乳で茹でる…といった工夫をすると、いつもの献立が減塩してもおいしく、さらにカルシウムもプラスされて骨密度アップにもつながります。

恐ろしい病気を引き起こす“ゴースト血管”の予防法

鎌田さんは“ゴースト血管”の恐ろしさも説いています。ゴースト血管とは血液が流れなくなった毛細血管のことで、冷えやむくみ、肩こりなど日常的な症状から、動脈硬化や高血圧、脳梗塞、さらにアルツハイマー型認知症の原因になるなど、問題視されています。

「“ゴースト血管”を防ぐためには、抗酸化作用のある食べ物を摂りましょう。緑黄色野菜の色素や赤い魚のアスタキサンチンには抗酸化作用があり、血管の老化を防いでくれます。

より手軽に毎日の習慣に取り入れるなら、“シナモンコーヒー”がおすすめです。シナモンやコーヒーに含まれるポリフェノールには、強い抗酸化力や血管拡張作用があり、2つを合わせることでさらに効果がアップします。血管が広がって血流がよくなると、毛細血管が修復されてゴースト血管対策になりますし、冷え性に悩む人にもおすすめです」

シナモンスティックとブラックコーヒー
鎌田さんがゴースト血管対策におすすめするシナモンコーヒー(Ph/photoAC)
写真10枚

“シナモンコーヒー”は、コーヒー1杯にシナモンスティック1/10本程度を好みの時間漬けるだけ。ただし、シナモンの摂りすぎは肝臓に負担をかけるので、1日2杯までを目安にしましょう。コーヒーが苦手なら、紅茶やハーブティーでもOK。シナモンの代わりにしょうがを入れてもよいそうで、しょうがの辛味が強いときは、はちみつを入れて飲みやすくしてもOKです。

◆教えてくれたのは:医師・鎌田實さん

ジャケットを着てハットをかぶった男性
医師の鎌田實さん
写真10枚

1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。1988年に長野・諏訪中央病院院長に就任し、脳卒中の死亡率が全国ワーストクラスだった長野県で減塩運動をスタートさせ、地域住民と公民館で食事をするなど「住民とともにつくる医療」を推進。地域包括ケアのさきがけとなり、長野県を屈指の健康長寿県に導いた。2005年より同院名誉院長に就任。『医師のぼくが50年かけてたどりついた鎌田式長生き食事術』(アスコム)のほか、実用書からエッセイまで著作多数。http://www.kamataminoru.com/

取材・文/イワイユウ 撮影/黒石あみ

●筋肉を作る簡単レシピ|鶏胸肉など高たんぱくな食材を活用した6品

●閉経後は骨密度の急激な減少に注意!「骨折してからでは遅い」骨粗しょう症の原因と対策を医師が解説