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スイスのお金持ちが株式よりも債券を好むのはなぜか?|賢い債券投資【前編】

債券の注意ポイント|同じ利率なら発行価格が「100」より低いこと

毎年決まった利息収入を得られて手堅く運用できる債券ですが、注意点が2つあります。

「1つは発行体の倒産リスク。万一発行体が倒産すると、損失が出ます。もう1つは、価格の変動リスク。債券は満期を待たずに途中で売ることもできますが、その時、買った時から債券価格が変動していた場合、損失が出る可能性があるのです。

債券価格は、発行されてから満期までの間、金利によって変動します。金利が上昇すると債券価格は下がり、金利が下落すると債券価格は上がります。

仮に、3年前に買った債券の利率が3%だったとします。その後、市場の金利が上がり、新たに発行された債券の利率は5%になりました。世の中の人は利率が高い方が得なので、利率5%の方の債券を欲しがり、購入しますよね。そうすると、3年前に買った金利3%の方の債券の価値が下がる。結果、債券価格も下落するというわけです」

お金が飛んでいく写真
債券にも損失が出るときがあることを忘れずに(Ph/PhotoAC)
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債券の発行価格をチェック

とはいえ、金利は今後どうなるか私たち素人にはわかりません。そこで1つの指標にしたいのが、債券の発行価格。各債券の情報を見ると、「発行価格」「募集価格」という欄があり、例えば、ほとんどのケースでは「各社債の金額100 円につき金100 円」「額面100円につき100円」などと書かれています。この「~につき金100円」の数字部分をチェック。

「債券の発行価格が100のことを『パー』といい、債券価格が上昇して額面100より高くなった場合を『オーバーパー』、債券価格が下落をして100より低い場合を『アンダーパー』といいます。この場合、同じ利率であれば、アンダーパーである、額面が95の債券を買うと、100になって戻ってくるため、リターンがいいといえます。

つまり、発行体が倒産しそう、といった例外を除けば、100より低い95などのアンダーパーの債券を買うことが、1つの目安になります」

債券の注意ポイント|最低購入価格や購入と売却のタイミング

一口に債券といっても、実はさまざまな種類があり、どの債券を買うかによってチェックポイントも異なります。

国内で買える債券(国内債券)の種類を大別すると、公共債と民間債の2種類。うち公共債には、国が発行した「国債」のほか、都道府県や市区町村が発行した「地方債」、日本政策金融公庫などの政府関係機関が発行した「政府保証債」などがあります。民間債には、一般企業が発行した「社債」、金融機関が発行した「金融債」など。

この公共債と民間債、購入時期や最低購入価格が異なります。

投資イメージ
債券にもさまざまな種類があり、購入時期や購入価格などが異なる(Ph/PhotoAC)
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公共債とは?個人向け国債は利率0.05%

まずは公共債から、もっともメジャーな個人向け国債に絞って説明してもらいました。

「国債とは一般的に10年国債のことを指しますが、個人投資家に人気な個人向け国債の利率(利息)はおおむね0.05%。メガバンクの定期預金の利率0.002%より若干高いくらいです。毎月募集があり、買う場合は証券会社や銀行などの金融機関から申し込み、最低1万円から購入できます。利息は年2回に分けてもらえます。満期日になる前に売却した場合、利息は日割りで計算されてもらえます」

民間債とは?購入は先着順

他方、民間債は各企業が不定期に債券を発行しています。

「取り扱う金融機関は、債券ごとに異なるため、特定の民間債を買いたい場合はいくつかの金融機関を見比べて探すことになります。購入は先着順なので、利率が高いなど魅力的な債券は募集期間内に完売してしまうことも。購入金額は、一般的には最低50万円から100万円くらい。中には、50万~100万円からしか購入できない債券もあります」

ほか、公共債と民間債の大きな違いは、満期の前に売りたくなったとき、いつでも売却できるかどうかという点です。

売る買うのイメージ
債券によって売れるタイミングも違う(Ph/PhotoAC)
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「個人向け国債は発行から1年経過しないと売却できません。それに対し、民間債は、発行後1年を待たずにいつでも売ることができます。その時注意したいのは、民間債は時価で売るため、買った値段より債券価格が下がっていたら、売却損が出てしまうことです。つまり、売り時を見極めることが重要です」

◆教えてくれたのは:ファイナンシャル・プランナー・渡邊一慶さん

ファイナンシャル・プランナー・渡邊一慶さん
ファイナンシャル・プランナー・渡邊一慶さん
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株式会社マネージュ代表取締役、ファイナンシャル・プランナー、マネー教育アドバイザー。1983年、愛知県生まれ。関西外国語大学を卒業後、三菱UFJ証券に入社。アメリカのシティバンク銀行からヘッドハンティングされて転職。その後、プライベートバンクで世界最大手のスイスのUBS銀行へ。クライアントアドバイザーとして、金融資産2億円以上の富裕層顧客の資産管理を担当する。2016年に独立して現職。著書に、『定期預金しか知りませんが、私、本当にお金持ちになれるんですか?』(秀和システム)がある。https://twitter.com/manege8341

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