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韓国映画『スマホを落としただけなのに』日本版との違いは? 静かな犯罪者が「スマホ」から日常に侵入してくる恐怖

静かな犯罪者イム・シワンの演技

平凡な会社員のナミは、ある日、飲み会の帰りにバスでスマートフォンを落としてしまう。ナミのスマホを拾ったのは、ウ・ジュニョン(イム・シワン)という青年。ジュニョンはナミのスマホをハッキングし、スマホのカメラやマイクでナミの生活を覗き見たり、SNSを操作してナミの人間関係を壊したりしていく。

一方、刑事のウ・ジマン(キム・ヒウォン)は、山奥で殺人事件の捜査をしていた。山に埋められていた遺体の近くに、ジマンは自分の息子がいた痕跡を見つける。ジマンの息子は7年前に家出し、それ以降連絡がとれていなかった。息子が殺人事件の犯人なのだろうか。真相を確かめるために、ジマンは事件に深く踏み込む。

「自分の息子が犯人かもしれない」と考え、部下とともに捜査を進めるジマン刑事/Netflix映画「スマホを落としただけなのに」独占
「自分の息子が犯人かもしれない」と考え、部下とともに捜査を進めるジマン刑事/Netflix映画「スマホを落としただけなのに」独占配信中
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スマホを拾った犯人の「ジュニョン」の描き方は、日本版の犯人と大きく違っている。

日本版の犯人は、例えばスマホのパスワードを解除できたときや、主人公の秘密にしたいであろう写真を見つけたときなどに、明らかに興奮している。長い髪の毛を指に巻きつけたり、貧乏ゆすりのように足を振るわせたりして、落ち着かなくなるのだ。ときには、気持ちが高揚して、突然大きな声を出すこともある。

ジュニョンはそうした感情を表に出すことがほとんどなく、すべての作業を淡々と行う。ナミの映像を見ているときなどは、リラックスしているようにさえ見える。ナミを目の前にしても話しすぎてしまうことはなく、邪魔が入ればすぐに引き下がる。

SNSや動画サイトを楽しむかのようにナミのスマホの中身を覗くジュニョン/Netflix映画「スマホを落としただけなのに」独占配信中
SNSや動画サイトを楽しむかのようにナミのスマホの中身を覗くジュニョン/Netflix映画「スマホを落としただけなのに」独占配信中
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急に「アハハハハ!」と笑い出し、目を見開いて早口で話すような殺人鬼も怖いが、表情が変わらず何を考えているのか読めない相手に狙われているというのも、かなり怖い。

ジュニョンを演じたイム・シワンは、日本でも人気のドラマ『ミセン~未生~』(2014年)の主人公チャン・グレ役や、映画『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』(2017年)でソル・ギョングとのW主演を務めていた。ボーイズバンド「ZE:A」のメンバーであることから、「演技のできるアイドル」を略した「演技ドル(ヨンギドル)」として人気のある俳優だ。

2022年に出演した映画『非常宣言』で、イム・シワンはハワイ行きの飛行機の中でテロを起こす犯人を演じていた。そのときも、「ちょっとした眼差しが怖い」「静かで、異様な雰囲気を醸している」と、演技を評価されている。

ジュニョンは偽名を使ってミナに近づいていく/Netflix映画「スマホを落としただけなのに」独占配信中
ジュニョンは偽名を使ってミナに近づいていく/Netflix映画「スマホを落としただけなのに」独占配信中
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今回演じたジュニョンも、静かに犯罪や殺人を犯していた。まるでそれらが生活の一部であるかのように、黙々と。「スマホ」という生活に根づいたアイテムと、毎日の暮らしに溶け込むジュニョンの佇まいが、重なり合って恐怖を増幅させる。

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